アメリカで生活をしている方は、日本にいた時より防犯対策について考えることが多いと思います。
その中でも、護身用アイテムとして注目されているのがペッパースプレーです。手軽に持ち運べて即効性があり、多くの人が自己防衛のツールとして利用しています。
しかし、ペッパースプレーの使用には法律や規則が関わっており、州ごとに規制が異なるため、正しい知識を持つことが必要です。また、誤った使い方をすると逆に危険を招く可能性もあります。
本記事では、ペッパースプレーに関する法律や規制、購入方法や使用方法について詳しく解説します。
アメリカ生活1年目の方でも分かりやすく、必要な情報を網羅した内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
ペッパースプレーの法律や規則
ペッパースプレーは州ごとに所持や使用に関する規制が異なります。
これを”Pepper Spray State Laws”といいます。
年齢制限や所持できる容量、購入可能な場所、さらに公共の場での携帯に関するルールなど、州によって全く別。そのため居住地や旅行先の規則を事前に把握しておかなければなりません。
以下の表では日本人が多く住む州をいくつかピックアップし、各州の規制を分かりやすくまとめました。
各州の制限(一例)
州 | 所持制限 | 購入制限 | 携帯制限 |
---|---|---|---|
イリノイ | 濃度10%以下、容量は制限なし | 特になし | 公共施設で携帯禁止の可能性あり |
ウィスコンシン | 濃度10%以下、2オンス以下 | 特になし | 特になし |
カリフォルニア | 18歳以上、2.5オンス以下、犯罪歴がある場合は禁止 | 特になし | 公共施設で携帯禁止の可能性あり |
コネチカット | 濃度制限あり、許可が必要な場合あり | 特になし | 公共施設での携帯不可 |
コロラド | 18歳以上 | 特になし | 制限なし |
ジョージア | 18歳以上、犯罪歴なし | 特になし | 制限なし |
ニュージャージー | 18歳以上、犯罪歴なし、3/4オンス以下 | 特になし | 特になし |
ニューヨーク | 18歳以上、犯罪歴なし | 薬局または銃器販売店のみ、オンライン購入不可 | 公共交通機関での携帯不可 |
ハワイ | 18歳以上、犯罪歴なし、2オンス以下 | 特になし | 特になし |
マサチューセッツ | 銃器免許保有者のみ | 銃器免許保有者のみ | 公共の場所での携帯不可 |
メリーランド | 18歳以上、犯罪歴なし | 特になし | 特になし |
ワシントンD.C. | 登録が必要、18歳以上、犯罪歴なし | 登録が必要 | 特になし |
他の州についての制限や各州の具体的な詳細については、各州の最新ガイドラインを確認するようにしてください。
”使用制限”について
ペッパースプレーを使用していいのは『自己防衛目的のみ』。
これは、生命や身体に危険が及ぶ緊急の状況でのみ使用が認められるという意味です。
具体的には以下のような場合に使用が認められます。
- 暴行や強盗から身を守るため
夜道で不審者に追いかけられ、身の危険を感じた場合。
強盗が無理やりバッグを奪おうとしてきた場合。 - 性的暴行を防ぐため
知らない男性に身体を押さえつけられそうになった場合。
自宅近くで執拗に付きまとわれ、身体的危険を感じた場合。 - 動物からの攻撃を防ぐため
散歩中に攻撃的な野犬が向かってきた場合。
キャンプ中に野生動物(例:クマ)が襲ってきた場合。 - 家宅侵入者に対処するため
自宅に侵入した不審者が危害を加えそうな場合。
夜間に窓から侵入しようとしている人物を発見した場合。
これらはすべて、差し迫った危険を感じた際に防衛手段として使用が認められる例です。ただし、ペッパースプレーを使用した場合は必ず警察に連絡し、使用した状況を正確に説明することが求められます。
そして自己防衛以外の目的で使用することは法律で禁止されています。
以下は具体的に禁止されている使用例です。
- 攻撃や威嚇目的での使用
駐車場での口論中に相手を脅すために噴射した場合。
他人を不快にさせたり、嫌がらせ目的で使用した場合。 - 軽いトラブルや誤解による使用
順番待ちの争いから、感情的に噴射した場合。
すれ違いざまに聞いた不快な言葉に対し、仕返しとして使用した場合。 - 冗談や悪戯目的での使用
学校や職場で友人に向けて”試し撃ち”として噴射した場合。
パーティーや集まりで冗談半分に使用した場合。 - 無差別に使用する場合
公共の場(駅やモール)で人混みに向けて噴射した場合。
他人に危害を加えるつもりがなくても、興味本位で広範囲にスプレーを撒いた場合。
これらはすべてペッパースプレーの正当な使用目的から逸脱しており、重大な問題を引き起こします。
また、誤用や乱用が原因で第三者に損害を与えた場合、民事訴訟や罰金が科される可能性があります。
ペッパースプレー使用のリスク
ペッパースプレーは使い方を間違えたり、状況を正しく判断できないまま使った場合、思わぬリスクやトラブルを引き起こす可能性があります。
ここでは、ペッパースプレーの使用に伴う主なリスクについて解説します。
安全に活用するためにも、事前にこれらの注意点を理解しておきましょう。
- 自分にかかる危険
風向きや環境によって、噴射したスプレーが自分自身にかかってしまうことがあります。これにより一時的に視界を失ったり、呼吸困難に陥る可能性があります。 - 誤使用による法的責任
誤って無関係な人に噴射してしまうと、相手に損害を与えるだけでなく、暴行罪や損害賠償請求を受ける可能性があります。 - 効果が薄れるケース
薬物を使用している相手や特定の動物には、ペッパースプレーの効果が薄いことがあります。相手が耐性を持っている場合、状況が悪化することもあります。 - 健康への影響
ペッパースプレーの成分は非常に刺激が強く、喘息やアレルギーを持つ人には深刻な影響を与えることがあります。また、長時間の曝露は目や呼吸器にダメージを与える可能性があります。
一番よくあるのが”強風時の使用での影響”。
これは毎年多くの地域で必ず起こるものです。(例:女性が夜道で身の危険を感じてペッパースプレーを使用。風が強かったため自身にかかり、視界を失い逃げ遅れ暴行に遭った)
プロのボディーガードでも、逃げながらや強風時には適切に使用できないことが検証されています。
また、催涙ガスやペッパースプレーによる負傷や死亡例も報告されています。BMC Public Healthによると、致死量の使用や誤用によって呼吸器官や目の損傷などの深刻な被害を引き起こす可能性があるといいます。※ペッパースプレーの中には催涙ガスを含んだものも多く販売されているので購入前に確認を必ずしましょう。
過去のトラブル事例
カリフォルニア大学デイビス校でのデモ活動中、キャンパスの警察官が座り込んでいるデモ参加者にペッパースプレーを使用しました。この事件は過剰な武力行使として全米で非難され、法的措置に発展。大学は影響を受けた学生1人あたり3万ドルを支払うことで和解しました。→記事
2024年5月、ニューヨーク市の学校内のカフェテリアで11歳の生徒がペッパースプレーを噴射し、31人の生徒と9人の大人が目やのど・肺の痛みを訴え、そのうち10人が病院に搬送されました。→記事
近年ブラジルで偽造ペッパースプレーが出回っており、アメリカ国内でもニュースになりました。メタノールを含む偽造スプレーが急性中毒を引き起こしたケースです。信頼できる製造業者や販売業者から購入することが大切であると広く知られるようになりました。アメリカ国内で販売されている可能性もあるので注意が必要です。→記事
ペッパースプレーの購入方法
ペッパースプレーを、購入する際にはいくつかの注意点があります。
購入可能な場所
- スポーツ用品店やアウトドアショップ
自己防衛用の製品を取り扱う店舗で直接購入できます。初心者にもおすすめです。 - 薬局や銃器販売店(一部州限定)
一部の州では、ペッパースプレーは薬局や銃器販売店でのみ購入可能です。 - オンラインショップ(州により制限あり)
Amazonや自己防衛グッズ専門のサイトでも購入できますが、一部の州ではオンラインでの購入は禁止されています。
購入時の要件
- 年齢制限
多くの州では、18歳以上でなければ購入できません。 - 犯罪歴
犯罪歴がある場合、購入が禁止される州もあります。 - 身分証明書の提示
店舗で購入する際、身分証明書の提示が必要な場合があります。
- 州ごとの規制を正しく確認しましょう。
- 個人用や野生動物用など、用途に応じた製品を選びましょう。
- 偽造品によるリスクを避けるため、正規販売店や認定されたお店を利用しましょう。
ペッパースプレーの使用方法
初めての方でも安心して使えるよう、ポイントをまとめました。
使用前の準備
- 使い方を確認する
購入したスプレーには取扱説明書が付いています。必ずすべて読んで使用方法を確認しましょう。 - 練習して慣れる
練習用スプレーを使用して、どのくらいの距離でどのように噴射されるのか試してみましょう。慣れておくと、いざという時に落ち着いて使えます。また、イメージトレーニングも行うようにしましょう。 - すぐ取り出せる場所に保管する
バッグの奥底やポケットの深い場所ではなく、すぐに手が届く場所に保管しましょう。
使用時の手順
- 相手に向けて構える
ノズルが必ず相手に向いていることを確認してください。誤って自分に向けないよう注意! - 距離を保つ
ペッパースプレーの射程は約3~5メートルです。相手に近づきすぎず、距離を取った状態で使いましょう。 - 目や顔を狙う
相手の目や顔を狙い、短く1~2秒程度噴射します。短時間で十分効果が得られます。 - その場を離れる
スプレーを噴射したら、相手の行動が制御されているのを確認して安全な場所に逃げてください。
使用後の対応
- 警察に連絡する
ペッパースプレーを使用したら、正当防衛だったことを証明するためすぐに警察に連絡しましょう。 - スプレーの残量を確認する
使用後は残量を確認し、少なくなっている場合は新しい製品を購入してください。
- 必ず逃げることを優先
ペッパースプレーは相手からの攻撃を無効化するツール。戦うのではなくすぐに逃げることを心がけましょう。 - 躊躇せず、自分を信じる
ペッパースプレーは正しく使えばとてつもない効果を発揮します。相手のことを考えず、自分を信じることが大切です。
これはYouTubeに上がっているペッパースプレーの使い方の動画です。
使い方は英語の動画で確認することをおすすめします。なぜなら日本で日本人がペッパースプレーを使用することが少ないから。知識や経験の数が違います。
また、コメント欄を参考にするのもひとつです。英語で防犯を発信しているYouTubeには、多くの視聴者の経験談がコメントで並びます。動画ももちろんですが、コメント欄が勉強になりますのでそちらの確認も忘れずに!
まとめ
アメリカでの生活には、日本とは異なる防犯対策が必要です。少しの知識と準備があれば、不安を安心に変えることができます。
ペッパースプレーは、あなた自身や家族を守るための力強い味方。ただし、正しく選び、使い方を学ぶことがとても大切です。
この記事が、あなたの防犯意識を高め、安心して毎日を過ごすための助けになれば幸いです。自分自身と家族の安全を守るために、ぜひこの記事で学んだことを実践してみてください。
あなたの生活がより安全で安心なものになりますように、心から応援しています。