【アメリカの性犯罪】統計データで見える真実と親ができる防犯対策

アメリカにおける性犯罪の現状は、日本と比較しても深刻であり、被害に遭う子どもも少なくありません。

近年の統計データによると、性犯罪被害に遭う子どもの割合は依然として高い傾向にあり、親や家族、周りの大人による防犯意識の向上が求められています。

親として、我が子がいつどのように危険に直面するかを正確に予測することは難しいものの、具体的な防犯対策を日常生活に取り入れることでリスクを減らすことが可能です。

本記事では、アメリカの性犯罪に関する統計データ、現状の実態とその背後にある要因を解説します。その後、親ができる具体的な防犯対策や、子どもに対する性教育の重要性について詳しくご紹介します。

大人になってからアメリカに来た方、アメリカに来たばかりのご家族にとって、異文化の中での防犯対策は大きな課題だと思います。本記事が日々の安心に繋がるサポートとなれば嬉しいです。

もくじ

注意点

まず、アメリカの性犯罪の統計を見る前に、注意してほしい点がいくつかあるのでお伝えします。

1.被害の未報告率

アメリカだけでなく、世界各国の性被害の多くが報告されないままだということです。

日本も例外ではありません。未報告の理由には、被害者の恐怖や不安、加害者との関係が近い場合の圧力、周囲に理解してもらえないと感じることなどが含まれます。そのため報告されている性被害の件数は、実際の件数よりも少ないと考えられており、保護者としては”見えない被害”(暗数)も考慮に入れることが重要です。

例えば、家の中や学校で子どもが安心して話せる環境を作ることは、性被害を防ぐだけでなく、ほかの犯罪の被害に遭った際も素早く助けを求められるようにするために良いとされています。性被害の統計を見るときには、被害が少なく見積もられている可能性があることを理解し、そういったことも含めて対策を考えることが大切です。

暗数(あんすう)とは

統計や調査に現れない「見えないデータ」のことです。たとえば、犯罪被害や病気の発症などで、実際には発生しているものの報告されていない、または調査されていないケースのことを言います。特に性犯罪などデリケートな問題では被害者が周囲に報告しないことが多いため、実際の被害数が統計よりも多い可能性を視野にいれて考える必要があります。暗数を理解することで、データが示す以上の実態まで考えられ、より正確な対策を立てることができるのです。

2.被害者の背景とリスク要因

被害者の年齢や家庭環境、障がいの有無など、リスクに影響する背景がたくさんあることを忘れないでください。

たとえば、年齢が高くなるにつれて性被害のリスクが増加したり、特定の家庭環境でのリスクが高くなることが統計で示されています。保護者として、子どもの年齢や生活環境に合わせて適切な安全対策を考えることが重要です。

また、近くに信頼できる大人がいない場合、子どもが危険に気づけなかったり、すぐに助けを求められない可能性もあります。こうしたリスクまでしっかり理解することで、家庭や学校での教育や環境づくりに役立ち、子どもが安心して生活できる環境を整えるための準備がしやすくなります。

3.日本の”当たり前”は通用しない

アメリカでの生活には、日本とは大きく異なる点が多くあります。

まず文化や法律が異なり、日本では当たり前とされることがアメリカでは通用しない場合があります。たとえば、アメリカでは法律に基づいた厳格な防犯意識が個々で求められていて、性犯罪者情報が公開されています。また、親が子どもを独りで外に出さないことが推奨される地域もあり、日本のように子どもだけで自由に公園や友達の家に行くといった感覚が通用しない場合があります。

さらに、学校でも防犯や性教育に関する指導が徹底されており、地域社会全体で子どもの安全を守る意識が強く根付いています。アメリカでは、子どもが独立して行動する際の危険を家庭でもしっかりと教育することが大切です。「日本では…」という考えに頼らず、現地のルールを理解し、柔軟に対応することが求められています。

これから性被害に関する統計をご紹介しますが、不安を抱きやすい方や、過去に同様の経験をされた方には、読まれる前にご自身の心の状態を確認されることをお勧めします。内容は事実をもとにしていますが、場合によっては辛さを感じるかもしれません。少しでも不安がある場合は、無理をせず、必要に応じてサポートを受けながら閲覧することも考えてください。心を守ることも大切な防犯対策ですのでご自身のペースで進めてください。

性被害の統計

それでは性被害の統計を一気に見ていきましょう。

どれも目を疑うような数字ばかりですが、目を逸らさず、今の自分にできることから少しずつ防犯対策を始めることをおすすめします。

  • アメリカ国内で、68秒に1人が性的暴行を受けています。
  • 被害者は年間約50万人。未通報のものを合わせると約81万人にのぼります。
  • CHPは9分に1人、18歳以下の子どもの性的虐待の訴えを立証または証拠を発見しています。
  • アメリカ国籍を持つ女性の6人に1人が一生のうちにレイプ未遂または完遂の被害にあっています。
  • 18歳以下の女の子の4人に1人、男の子の6人に1人が性的虐待を受けています。
  • 18歳以下の子どもの5人に1人がインターネット上で性的な勧誘を受けています。
  • 報告された性的暴行の約70%が17歳以下の子どもに対するものです。
  • 児童性虐待の被害報告の中央値は9歳です。
  • 18歳以下の子どもの85%は性虐待被害を報告しません。
  • 強制的な性的虐待の被害者の約50%が12歳以下の子どもです。
  • 被害者の30〜40%は家族から虐待を受けています。
  • 加害者の90%以上は顔見知りです。
  • 性犯罪者の約70%は1〜9人に加害をし、20%以上は10〜40人に加害をしています。
  • 児童性虐待者の中には生涯で最大400人に被害を加えている人もいます。
  • 連続レイピストの75%以上が、幼少期に自身も性的虐待を受けたと報告しています。
  • 幼少期のレイプ被害を報告した女性は、18歳までに妊娠する確率が3倍高いとされています。
  • 性加害者の平均年齢は27歳です。
  • 児童性的虐待の被害者は性に奔放になる可能性が高く、10代の売春婦の75%以上が過去に性的虐待を受けています。
  • アメリカには推定4,200万人の幼少期の性的虐待の生存者が存在します。

児童の性的虐待の証拠は必ずしも明確ではなく、多くの子どもが虐待されたことを報告しません。

特に幼い被害者の場合、自分が性的虐待の被害に遭っていることを認識しない場合もあります。家族の対応は、被害者への影響に大きな役割を果たします。虐待の被害を親に隠したり、話しても信じてもらえなかった子どもは、成人期にわたる心理的・社会的な問題にさらされやすくなるのです。

2009年から2013年の間、CPS(アメリカの児童相談所のような機関)は年間63,000人の子どもが性的虐待の被害に遭ったことを確認しています。

https://rainn.org/statistics
https://rainn.org/statistics
事件発生時、被害者は何をしていたか
  • 48%は家にいた、または就寝中
  • 29%は通勤通学中、または移動中
  • 12%は仕事中
  • 7%は授業を受けるため校内にいた
  • 5%は不明、またはその他の活動中

何度も言いますが性的暴行は測定が非常に難しく、完全な犯罪の内容を示すデータは存在しません。

RAINNのウェブサイトは、最も信頼性の高い統計情報を選んでいます。主なデータ源は、司法省が毎年行う全米犯罪被害者調査(NCVS)です。この調査では、毎年何万人ものアメリカ人にインタビューを行い、報告されなかった犯罪も含む総犯罪数の推定を提供しています。

NCVSにはいくつかの制限(12歳未満の子どもが含まれていない点など)がありますが、それでもアメリカで最も信頼性の高い犯罪統計情報の一つです。他にも司法省の調査、保健福祉省や学術機関のデータも利用しています。

では、性被害に遭わないために、親はどうすればいいでしょうか。

親ができること

性的虐待は、どの人種、社会経済的グループ、宗教や文化の子どもにも起こり得ます。

アメリカに住む日本人の子も例外ではありません。特に第二言語として英語を話す子ども、ある程度大きくなってから渡米してきた子どもにとっては、英語を話すという壁があります。性被害だけでなく普段抱えている何気ない問題も、親を含む周りの大人に相談しにくい環境がすでに出来上がっているのです。

子どもを守るためには、性的被害について知っておくことが大切です。日常の生活の中で少し意識を向けるだけで、リスクを減らす手助けができることがあります。親としては、「うちの子には関係ない」と思いたい気持ちも理解できますが、残念ながら予測できないことも起こり得ます。

子どもを完全に性的虐待から守る方法はありませんが、リスクを減らすための対策は取れます。

もし何かが子どもに起こった場合、責任は加害者にあります。あなたや子どもに責任はありません。

これは不安を煽るためではなく、大切な家族の安全を守るための知識としてお伝えしています。以下に、子どもを守るために取れる具体的な方法をご紹介します。

もし子どもからすでに性被害の報告を受けている方、今現在危険にさらされていると判断した場合は、迷わず911に連絡してください。状況がはっきりしなくても大丈夫です。「疑わしきは罰せず」ではなく疑わしい場合には状況を確認し、被害を止めるための行動を取りましょう。

積極的に関わりをもちましょう

子どもの生活に積極的に関わってください。

子どもは何かトラブルを抱えている時、一番最初に出すサインは非言語のものです。食欲がない・朝起きない・常にイライラしている・目を合わさないなど、まず何らかの”違和感”があるのです。そして性的虐待を親に言葉で伝えるのはとても勇気のいること。だからこそこういった子どもの変化にいつでも気づけるよう関わることが大切です。あなたが強くアンテナを張ると、子どもの出す”助けて”というサインがより分かりやすくなり、子ども自身があなたに相談しやすくなるのです。

日々、子どもの生活に興味をもち、今日何をしたか、誰と過ごしたかを聞いたり話しやすい環境を作りましょう。昼食時に誰と一緒に座ったのか、どんな遊びをしたのか、今日一日楽しめたかどうかなど、お子さんの興味のある分野の質問を投げてみてください。

子どもがどういう人付き合いをしているか知ることも大切です。学校の友達や友達の親、チームメイトやコーチなど、子どもが接する人についてもなるべくオープンに話すことで、子どもも自然に話しやすくなります。

新しい話題を切り出す機会を与えましょう

子どもとの会話では、自然と心を開いて話せる環境を作ることが大切です。

『楽しかった?』『今日はどうだった?』といった質問だけでは、必ずしも子どもの本音が聞けるとは限りません。時には、もっと広い視点で、別の角度で話を引き出す質問をしてみてください。

たとえば、『今日は何か面白いことあった?』『他に話したいことがある?』など、子ども自身が考えて答えを導き出せるような質問を投げかけることで、自分の気持ちや考えを伝えやすくなります。

また、子どもが自ら話題を切り出すこともできるように、余裕のある時間と安心できる雰囲気を用意しましょう。あえて沈黙を恐れず、子どもが話したいと思うまで待つことも大切です。お子さんから自然と言葉が出てくるまで待っていると、思わぬ話題が出てくることがあります。こうすることで、日常の些細な悩みや子どもの新しい興味についても知る機会が増え、親子の絆がより深まるはずです。子どもの思いがけない視点や感性に触れることは、親にとっても新しい発見になります。

普段からこうした関わりを大切にすることで、子どもは何か困ったことが起きたときにも、相談しやすい関係が生まれます。

”声を上げる勇気”を持たせましょう

子どもにとって、自分の気持ちや考えを話すことができる環境はとても大切です。

特に子どもの中で消化しきれない疑問や怒りが生まれたとき、そのことを誰かに伝える勇気を持つためには、普段から親や周囲の大人に「自分の声が届いている」「自分の意見が尊重されている」と感じられるような関わりが必要です。

子どもは自分の話が真剣に受け止められると感じると、安心して何でも話すことができるようになります。日常的にお子さんがどんな小さなことでも話せる環境を意識して作っていきましょう。

お子さんが感情や気持ちについて言葉で表現できるようになったら、こうした対話を始めることができます。『今日嬉しかったことあった?』『嫌だと感じることはあった?』など、気軽に話しやすい質問をしてみてください。こうすることで、お子さんは自然と自分の気持ちを伝える練習ができ、いざ助けが必要になったときには自信を持って声を上げられるようになります。

もしこうしたテーマについてまだ話していないという方、心配する必要はありません。始めるのに遅すぎることはないからです。どの年齢からでも、少しずつお子さんと気持ちについて話す機会を増やすことで、子どもは安心感を持ち、困ったときにも相談できる環境が整っていきます。

境界線(バウンダリー)について教えましょう

自分の体に対する”バウンダリー(境界)”があることを教えましょう。

バウンダリーとは、自分の体や気持ちに対する守られるべき境界のことで、他人に自分の体を自由に触れさせる必要はないということです。たとえ身近な家族であっても、子どもが嫌がる場合には触れられたくないと感じる気持ちが尊重されなければなりません。例えば、おじいちゃんやおばあちゃんからのハグや、パパやママによるくすぐりも、子どもが嫌だと感じているのであれば、無理に続けてはいけないのです。また、子どもの「嫌だ」を大人が笑って茶化すことなど決してあってはなりません。

子どもには『自分の体は自分のもの』であると伝え、嫌なときには「ノー」と言う権利があることを教えましょう。たとえば、「今日は抱っこされたくない」と感じたとき、それを言っても良いと伝えます。また、同時に子どもにも、相手が触れてほしくないと思っている場合には、その人の体にも触れるべきではないことを理解させましょう。

”お互いの気持ちや体の境界を大切にする”という考え方が、相手を尊重する態度にもつながります。こうした小さな教えが、子どもが自分の体に対する責任を感じ、困ったときに助けを求めることができる力となります。

自分の体について話す方法を教えましょう

幼いころから子どもに体の部位の名前を正しく教えることは、自分の体に対する理解を深め、万が一何か問題が起きたときに相談しやすくするための大切な一歩になります。

性教育というと難しく感じる方もいるかもしれませんが、体の部位に正しい名前をつけることから始めると、子どもも親しみを持って学べるようになります。例えば、手や足と同じように、性器にも名前があることを教えます。『ここは○○という名前で、他の人には触れられない大事なところなんだよ』といった説明をすることで、子どもは自分の体の一部として自然に受け入れやすくなります。

体の名前を正しく知っていることで、もしも不快な思いをした場合や異変を感じた場合に、子どもが具体的にどこに何が起きたのかを伝えやすくなります。『お腹が痛い』と言えるのと同じように、『ここが痛い』と説明できることで、大人も状況を把握しやすくなります。

怒られることはないと伝えましょう。

性被害を防ぐためには、何か困ったことがあったときに、話しても安心だと感じられることがとても重要です。

多くの加害者は、「これは2人だけの秘密だよ」「もし誰かに言ったらただじゃ済まない」などと言って、子どもが真実を話さないように仕向けることがあります。そのため、親は普段からお子さんに『何を話しても絶対に怒らないよ』『話してくれてありがとうね』と伝えることが大切です。たとえば、『もし何か嫌なことがあったら、どんなことでも教えてね。ママもパパもちゃんと話を聞くよ』と優しく声をかけてください。

実際に子どもが何かを打ち明けてきたときには、驚いたり感情的になったりせずに、落ち着いて聞くように心がけましょう。同様して泣いてはいけません。親を泣かせてしまった罪悪感を子どもに植え付けることは、子どもの傷をより深くしてしまうからです。

特に性に関する話題や、不安に感じるような話が出た場合でも、『教えてくれてありがとう。ママやパパはあなたを必ず守るから心配しないで』とまずは安心させることが大切です。その後に詳細を聞き、必要に応じて専門家に相談するなど、適切なサポートを考えましょう。

こうした対応を繰り返すことで、お子さんは親に信頼感を持ち、何か困ったことがあったときにもためらわずに話せるようになります。たとえ難しいと感じるときでも、冷静に話を聞く姿勢を持つことで、子どもが安心して話せる関係が築かれていきます。

あなた自身が知識を付けましょう

最後にとっても大切なことをひとつ。

子どもを性被害から守るには、まず親であるあなた自身が性について学ぶことが大切です。日本では性について『恥ずかしいもの』や『隠すべきもの』とされてきた影響で、性教育の機会がなかった方も多いかもしれません。しかし、性についての知識はお子さんの安全を守るために必要な大切なものです。

例えば、性教育を通じて『体の大事な部分には名前があり、他人には触れさせないもの』といった基本的なことを教えるだけでも、子どもは自己の境界を理解しやすくなります。さらに、親が性に関する質問に対して冷静に答えられる姿勢を見せることで、子どもも安心して疑問を相談できるようになります。たとえば、『なぜプライベートゾーンが大切なの?』といった子どもの質問にも、具体的に説明できるようになります。

まずは親自身が性教育についての本を読んだり、信頼できる情報源から学んだりすることから始めてみましょう。親がしっかりと知識を持つことで、子どもが成長し、自己を守る力を身につけるためのサポートができるようになります。

まとめ

アメリカでの生活において、子どもを性犯罪から守るためには、親の防犯意識と日々の関わりが重要です。

統計データが示すように、性被害のリスクを完全に排除することは難しいものの、家庭内での適切な性教育やバウンダリーの尊重を教えることで、子ども自身が危険を察知し、自己を守る力を養うことができます。また、信頼できる大人に不安を相談できる環境を整えることも効果的です。

異文化の中で親としてできる最大のサポートは、子どもが安心して自分の体を守れるように導くことです。

本記事が、防犯対策の一環として日常生活に役立つ情報となれば幸いです。

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